2012年1月2日月曜日

翻訳者の卵さん・初心者さんへ - 職業の向き・不向きということ

好きな職業、憧れの職業が自分に向いているとは限りません。あなたはフリーランス翻訳者に向いているでしょうか? 私の経験をお話しましょう。


★ 憧れの OL

結婚して東京暮らしを始めるときのダーリンとの約束は、私のキャリア人生を応援してくれること。北海道の片田舎から上京して、ふたりの新生活をスタートしました。そのときに私の頭にあったのは、キャリアスーツを着て、ブリーフケースを下げ、ぺたんこローファーでさっそうとオフィスビル街を闊歩する自分の姿でした。

なんとなく人付き合いが苦手で、自分から積極的に人と関わるのを避けている節があった自分。そんな自分から脱却して、新しい自分になりたい。そんな風な気持ちもありました。

それほど高みを目指したわけじゃなく、イメージだけでも実現してみたかった。

で、実現しました。赤坂見附のオフィスビル街にある、ある一流企業が臨時社員を募集していたので、それに応募して採用されました。ま、言ってみればパートのおばちゃんなんですけども。

営業部で納品管理を任されました。さっそく、それらしい服とバッグを買い、喜び勇んで、毎日、満員電車に揺られて通勤しました。

最初に教えられたのは、ワープロ専用機とパソコンの使い方。これが楽しかった。タッチタイピングは結婚前にマスターしていたので、すぐに使い方をマスターできました。

同じ課には、課長付きの秘書兼通訳の女性もいて、課員の皆さんもアメリカや韓国の取引先と英語で電話してる・・・。憧れていた通りのオフィスで、うれしかった。


★ 挫折は早かった

でも、2 か月たって、ワープロとパソコンもすっかりマスターしてしまうと、納品管理の仕事は単調で。

毎朝、毎夕、満員電車に揺られ、帰宅後、夕食、入浴が済むと、明日のために早く寝なくちゃ、という時間。好きな本を読む時間もあまりとれず。

1 日の大半を仕事に費やして、もらえるお給料は 11 万円。臨時職員だから、やりがいのある仕事を任されるようになるのは、ずっと先の話か、まったくないか。

だんだん満員電車が苦痛になり、そのうち、微熱が出て、朝、起きられなくなり、尿たんぱくが出て・・・。

「ああ、私には憧れの OL 生活は向いていない」と思うようになりました。

で、3 か月で辞めました。


★ 無理やり翻訳者

同じように 1 日の大半を費やすなら、もっとやりがいがあって、もっとお給料のよい仕事・・・と考えて思いついたのが翻訳の仕事。

当時(ン十年前)は翻訳専門の業界誌などはなかったので、アルバイト情報誌や新聞の求人広告で翻訳の仕事を探しまくり、履歴書を送りまくり、トライアルに落ちまくり、何とかつかんだ仕事を履歴書に実績として書き足しては、また応募しまくり・・・無理やりフリーランスの翻訳者になりました。

で、そのまま現在に至ります。

誰にも会わずに、1 日中キーボードに向かっている生活は、実の妹のような従妹に言わせると「私の一番苦手なことを仕事にしてるんだねえ。」

従妹にとっては、人と会話したり、体を動かしたり、といったことがない仕事というのは、苦痛以外の何物でもないとか。

でも、私にとっては、この働き方が性に合っているようです。

あなたが、もし、翻訳という仕事に憧れているのなら、やってみたらいいと思う。やってみなければわからない向き・不向きというものがあるから。

翻訳、特に実務翻訳や産業翻訳と呼ばれる仕事は、文芸翻訳と違って、どこに名前が載るわけでもなく、何の保証も、福利厚生も、年金、恩給、退職金もなく。デメリットがいっぱいの仕事。

それでも、英語が好きで、日本語が好きで、1 日中、誰にも会わずにデスクに向かっていることが気にならないなら、あなたは翻訳者に向いているかもしれない。

どうせ 1 日の大部分を仕事に費やすなら、好きな仕事、向いた仕事でなければ続かないですからね。やってみたらいいと思いますよ。やってみて、本当に自分に向いているかどうか、それから判断したらいいと思う。まずは、Let's try!





1 件のコメント:

princessmia さんのコメント...

はじめまして。こんばんわ。
大学生です。
英仏語をしていることもあり時折翻訳業のことを考えてしまいます。
筆者さんのおっしゃった
「英語が好きで、日本語が好きで、
1 日中、誰にも会わずにデスクに向かっていることが気にならないなら」
というのは私には支障のない課題です。
元々一人が好きで家ではPCに向かっているような人間なので(ひきこもりではないですよ!!!)、これだけ見れば、条件はクリアしているように感じてしまわないでもないです。
ただ
「実務翻訳や産業翻訳と呼ばれる仕事は、文芸翻訳と違って、どこに名前が載るわけでもなく、何の保証も、福利厚生も、年金、恩給、退職金もなく。デメリットがいっぱいの仕事。」
という現実を現役の方から聞くと、
再考する必要あるのだなと感じてしまいます。